シャーウッドclub特別号 presented by dancyu 家飲みワインの大いなる愉しみ方 個性豊かな日本のワイナリーをめぐる

第3回
106年目のワイナリー
くらむぼんワイン(山梨)

自社栽培のぶどう畑で語る四代目野沢たかひこさん。

日本のぶどう栽培発祥の地・勝沼。この地で1913年から続く「くらむぼんワイン」は、勝沼のなかでも草分けとされるワイナリーのひとつ。四代目の野沢たかひこさんにご案内いただきながら、山梨でワイン造りを続けていくことや、新しくはじめられたこと、代表的なワインとそれに合うおすすめの食事の楽しみ方を教えていただきました。

築150年の養蚕農家を移築し、母屋として使われていた民家。現在はテイスティングルームと資料館に使われています。

勝沼の土地でワインを造る誇り

「くらむぼんワイン」は、2013年に創業100周年を迎えたのを機に、原料となるぶどうを国産100%にしたワイン造りに取り組んでいます。たかひこさんが目指しているのは、ぶどう本来のやわらかく優しい風味が楽しめるナチュラルなワインを造ること。そこで「くらむぼんワイン」のぶどう栽培では、2007年から除草剤や殺虫剤、化学肥料を使用せず、土も耕さないという自然栽培を行っています。「薬に頼りすぎると、人間の自然治癒力が下がってしまうのと同じように、ぶどうも農薬や化学肥料を与えることで、植物が本来持つ強さや個性が消えてしまうと思うんです。ですから化学物質を使わない栽培方法で植物自身の抵抗力を上げ、力強いぶどうを育てたい。さらに、やわらかい土だと、根っこがぐんぐん伸びて、たくましくなっていくんです」。

また、たかひこさんの代になってからは、ぶどうの栽培法を、日本のワイナリーの多くで採用されている棚造りから、ヨーロッパ型の平垣根へと変更。たかひこさんが20代前半にフランスのブルゴーニュで学んできたワイン造りの知識を活かしました。さらに、作付面積から考えると本来3トン以上のぶどうが採れるところ、一枝につける房の数を一房に抑え、生産量を年間800キロ程度に調整するなど、丁寧にぶどうを育てています。
また、たかひこさんはフランスへの留学期間中に、地方の料理とその土地で作られるワインを家庭の食卓で愉しむという文化を知ったことで、家業である勝沼のワイナリーを継ぐ気持ちが固まったそうです。

「くらむぼんワイン」の四代目醸造家・野沢たかひこさん。

ワイナリーから徒歩1分の場所にある、垣根畑の“七俵地畑”。品質を保ちつつ収穫量を増やすため枝を二股にしている。

2014年に社名を変更した際、ネーミングのヒントとなったのは、宮沢賢治の名作「やまなし」。人と自然の共存を説く宮沢賢治の思想に共感し、本文中にあった「クラムボン」という言葉を屋号にかりて、「くらむぼんワイン」としたのです。
「改名前は、『株式会社 山梨ワイン』でした。前年に地理的表示山梨が告示されましたし、山梨、という言葉が指し示す規模が少し大きいなと感じていたんです。先代にあたる父は社名の変更に反対していましたが、勝沼という土地でワインを造っていることの誇りも込めて、思い切って社名を『くらむぼんワイン』に変えたのです」。

ぶどう畑の土は雑草を絨毯のように自生させ、ふかふかにしている。そのため、水分や養分が適度に保持されて、化学肥料を使わずに自然なつくりのぶどうに育っていく。

自社畑で採れたぶどうで造るワイン。(左:Nカルベネ・ソーヴィニョン、右:Nマスカット・ベーリーA2017)新しいビンテージからエチケットをリニューアルし始めている。

日本最初のワイン産地の、老舗ワイナリー

勝沼では、明治10年に政府の殖産興業政策の一環として、日本初のワイン醸造の会社「大日本山梨葡萄酒会社」が設立されました。そして二人の青年がワインの本場フランスへと派遣され、本格的なワイン造りを習得。二人は帰国するとまもなく、勝沼で本格的なフランス式のワイン造りに着手。当時は木桶をもとにしてぶどう圧搾機を造るなど、古くから日本で使われていた農業用の道具や醸造用の土瓶などを利用して、ワイン造りが行われていました。

勝沼のワインづくりに関する展示スペース。パネルや、実際に使用されたぶどう圧搾機など貴重な資料を展示している。

展示スペースのはいる日本家屋は、かつて母屋として使われ、現在は休憩スペースやワインショップ、資料室として使われている。

展示資料の一部。右の書物はくらむぼんワインの創業家に伝わる「野沢家傳秘書」。

「くらむぼんワイン」は、勝沼でもっとも古いワイナリーのひとつで、初代となる野沢長作が自家ぶどうでぶどう酒造りを開始したのは1913年。牧丘町にあった養蚕農家の家屋を現在ワイナリーがある土地に移築させて、そこを母屋としてぶどう酒造りに励みました。その後、近隣のぶどう農家を集めた「田中葡萄酒醸造協同組合」に参加するなどさまざま変遷を経て、株式会社化し『株式会社山梨ワイン』となったのが2006年でした。

敷地内には、創業時からの古い建物がいくつも残り、そのうちの一つを、セラーとして利用している。先人が手で掘ったという地下室への入り口が、年月を感じさせる。

「くらむぼんワイン」のいま

現在「くらむぼんワイン」のワインは、「蔵」「くらむぼん」「くらむぼんスパークリング」など、いくつかのシリーズで展開中です。そのなかで、このワイナリーのワイン造りを最も象徴しているのが「N(エヌ)」シリーズ。最大の特徴は、他の農園のぶどうは一切使用せず、「くらむぼんワイン」の自社畑で栽培したぶどうだけを使っていることです。野沢(Nozawa)の頭文字「N」を冠したシリーズ名は、たかひこさんたちのこだわりと自信の現れなのでしょう。
近年、ますます日本ワイナリーの質が上がり、海外からの注目度が高まってきています。特に親しまれているのが勝沼産のワインや、甲州種を使ったワイン。そのなかの老舗ワイナリーの醸造家として、たかひこさんはこんな思いを語ってくれました。「海外から注目されるのは、とても嬉しいこと。近年では海外の醸造家が勝沼に訪れることも増えてきました。同時に思うのは、今よりもさらに日本の食文化にワインが根付くといいな、ということ。ブームで終わらずに、定着していくといい。日本で作ったワインは、和食との相性もいいし、鍋物とも合わせやすい。ぜひ、普段の食卓にも取り入れてみてください」。

Nシリーズ/マスカット・ベーリーA2017。花やリンゴのコンポートのような自然な香りが特徴的で、まろやかな渋み、酸味のバランスがとれた赤ワイン。焼き鳥(タレ)や鳥もつ煮などと合わせるのがおすすめ。

Nシリーズ/甲州2017。柚子、蜜柑のような香りや、そして樽由来のシナモンのような芳しい香りが特徴的な白ワイン。濃い味付けの煮物、柚子胡椒や味噌を使った鍋物におすすめ。

くらむぼんワインの人気シリーズ くらむぼん樽甲州2017、くらむぼん甲州2017、くらむぼんマスカット・ベーリーA2017

今回の家飲みワイン

キュヴェパピーユ レイトボトルド デラウェア (2017、白)

厳選した勝沼町産甲州種100%使用。ステンレスタンクにてじっくりと低温醗酵させてから樽で醗酵したワインとブレンドし、飲みごたえのある白ワインに仕上げています。
柚子やみかんなど日本の柑橘系の果物を思わせる風味とフレッシュな果実味、オーク樽の香りがほんのりと加わり、複雑で芳ばしい味わいが特徴です。「柑橘類のようなフレッシュな果実味と、酸味のバランスも良く、四季の食材を使った鍋物や山梨名物のほうとうと合わせるのがおすすめです。休日の昼に飲むのにぴったりかな、というのが私のイメージです。ひとりでじっくり味わってもよし、何人かでワイワイ飲んでもよさそうですね。また、2017ビンテージは、特に梨のような甘さと香りが豊かなのが魅力です」(野沢さん)

コクのある白ワインはお肉料理との相性抜群ホームパーティーにもおすすめ

フレンチレストラン「ミル・プランタン」は2010年に勝沼にオープン。東京・銀座の名店「レカン」の元シェフソムリエ・五味丈美さんが、勝沼ワインの面白さを探求し、全国、そして世界へと発信することを志したことから始まりました。近隣のワイナリーのワインを扱ったり、醸造家との交流を深め、勝沼ワインを盛り上げようとしているなかで、「くらむぼんワイン」のたかひこさんと懇意になったといいます。そんなご縁から、今回のおすすめレシピをご紹介いただきました。

左から、「くらむぼんワイン」の野沢さん、「ミル・プランタン」の五味さん。
野沢さんは、五味さんとともにテイスティングを重ねながら、ワインの味わいや魅力を模索し、素晴らしいワイン造りとはなにかを追求し続けている。

「ミル・プランタン」内観。八角形の特徴的な空間だ。
勝沼に点在するワイナリー群をつなぐ交流の場として、現地の人々からも親しまれている。

「ミル・プランタン」では特注のランチョンマットを使用。勝沼の地図が書かれており、近隣のワイナリーを紹介している。
今回の家飲みワイン「くらむぼん樽甲州」とのマリアージュとして提供している「甲斐サーモンのマリネ」

「ミル・プランタン」の土屋義幸シェフが紹介してくださったのは、土日祝日限定のランチメニューとして人気の「甲州富士桜ポークのロースト」。お肉には赤ワインを合わせることが多いですが、実は「くらむぼん樽甲州」のように樽で醗酵させた強い味わいの白ワインとのマリアージュもおすすめ。「『くらむぼん樽甲州』はリンゴのような甘さやバニラ香があり、飲みごたえのあるワイン。豚肉との相性も良いです」(五味ソムリエ)。お住いの土地で手に入りやすい豚肉で十分にマリアージュが楽しめるとのことです。

甲州富士桜ポークのロースト

【甲州富士桜ポークのロースト】

材料(5〜6人分)

・甲州富士桜ポーク(肩ロースブロック) 0.7kg ※甲州富士桜ポーク以外の豚肉も可
・塩、胡椒 適量
・ローリエ 2枚
・にんにくスライス 6切れ

つくり方

1. 豚肉に塩、胡椒をすり込んだ後、皮目にローリエとにんにくを添えてラップで巻き、冷蔵庫で半日ほど寝かせて下味をつける。
2. 冷蔵庫から取り出した豚肉を、ローリエ、にんにくとともに温めたフライパンに皮目からのせ、強火で焼く。
3. 全体に焼き色がついたら、パイ皿などの容器に乗せて220℃のオーブンで15分(半量で作る場合には肉が小さくなるので7〜8分)ほど焼く。
4. いったんオーブンから出してひっくり返し、もう一度オーブンに入れて15分ほど焼く。
5. 4を繰り返し、豚肉の中心温度が63℃くらいになるまで続ける。(肉の温度を測る道具がない場合は、豚肉を外側から指で押し、すぐに形が戻る程度のかたさになるのを目安にする)
6. オーブンから豚肉を取り出し、5〜6等分(半量で作る場合には2〜3等分)に切り分けて皿に盛り付け、【りんごのピューレ】をかける。

【りんごのピューレ】

材料

・りんご 1個
・バター 15g
・水 500cc
・グラニュー糖 20g
・レモン汁 1/4個分
・塩、胡椒 適量

つくり方

1. りんごは皮をむき、櫛形に切り分ける。皮は捨てずにとっておく。
2. カットしたりんごとバター、グラニュー糖を小鍋かフライパンに入れて、中火でソテーする。
3. 2にりんごの皮と水を加え、中火で煮てやわらかくする。
4. 3からりんごの香りが立ってきたら、火からおろしてミキサーにかけてピューレ状にする。
5. レモン汁、塩、胡椒で味を整えたらできあがり。

「気の置けない友人と過ごす休日の昼間に、ワイワイと取り分けながら楽しんでほしい」と五味さん。そんな思いからレシピも大人数の想定でご紹介してくださいました。

たとえばシャーウッドの空間で…

光と緑が溢れる気持ちのいい空間なら、友人たちと家飲みワインで過ごす時間がもっと特別なものに。クリアビューデザインで床・天井がフルフラットにつながり、自然の心地よさで包まれます。(シャーウッド宇都宮西展示場)

もっとワイン上手になる。

日本家屋内のワインショップには、ワインのボトルを並べたテイスティングコーナーを常設。500円払うとテイスティンググラスが渡され、気になる商品を自由に試すことができます(ワインを購入すると、500円返金)。 見どころは、それぞれの試飲ボトルにかけられた手書きのタグ。タグには、「大葉とウニの冷製パスタ」「ささみとネギの柚子こしょうあえ」など、ショップのスタッフが実際に自宅で試しながら考えた、それぞれのワインに合うオススメのおつまみが書かれています。「くらむぼんワインのすべてのラインナップに共通して言えるのは、和食にも合わせてみてほしい、ということ」と、野沢さん。購入する際には、自分の食の好みを伝えながら相性のいい料理を提案してもらうことも、ワイン選びの楽しみのひとつです。
※一部シリーズは対象外。

ご協力いただいたワイナリー

くらむぼんワイン

山梨県甲州市勝沼町下岩崎835
0553-44-0111

ご協力いただいたレストラン

ビストロ・ミル・プランタン

甲州市勝沼町下岩崎2097-1
0553-39-8245

文=吉田彩乃 撮影=遠藤素子

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