世界に一つだけの家づくりのストーリーを

都市や住宅の大切さを
目の当たりにして決めた設計への道。

高校時代の冬、久永茂生の生まれ育った街が一瞬にして瓦礫の山と化した。阪神淡路大震災である。ようやく通えるようになった高校の体育館には被災者があふれ、炊き出しなどのボランティアをする日々が続いた。そんな毎日を過ごしていた久永の心に、ある思いが宿ったという。
「都市や住宅が崩壊し、失って初めてその大切さを痛感しました。その時、建築の道に進もうって決めたんです」
東北大学の建築学科に進学し、コルビジュエ氏や安藤忠雄氏など世界的な建築家の存在を知るうちに、建築の面白さ、奥深さに引き込まれていった。設計の仕事をめざし、大学院に進み、在学中には1年間アトリエで建築の基礎を学んだ。

ハウスメーカーへの先入観を払拭する
親身な提案によって信頼が芽生えた瞬間。

「お客様と一緒に家づくりがしたかった」
これが、最初に就職したゼネコンを2年で退職し、積水ハウスに転職した理由である。そして入社2年目のある日、お客様の思いを形にする仕事に充実感を感じ始めていた久永に、大きな節目となるあるご家族との出会いがあった。難病で介助の必要なお子様がいらっしゃるご家族だった。現状はもちろん、将来を考えると、建売りではなく自由設計しかない。
「障害のことも、予算のことも、他人に触れられたくないことまですべて話してくれました。だから僕もすべてをさらけ出して本気で取り組み、お子様の成長と病状の変化に対応できるプランを一緒につくりあげていったんです」
お子様の担当の理学療法士から今後起こりうる変化についてヒアリングを行い、リハビリセンターで車椅子からの移乗など介助の動作確認もご家族と一緒に体験した。ある時、図面を見た奥様が「こんなに長い距離が必要なの?」と疑問を抱いたスロープも、実際に検証すると、ご家族が要望していたものでは勾配がきつく昇れないことが実証された。
「それを見た奥様が、本当に私たちのために真剣に考えてくれていることがよくわかりましたと言ってくれたんです。その瞬間、これで信頼してもらえたんだって嬉しくなりましたね」

一邸一邸にあるかけがえのない
「家づくりのストーリー」を紡ぐ喜び。

この家族の家づくりに携わってから、家とそこに住む人との関わりをより深く考えるようになったという久永。入社して7年目には、設計部門お客様入居後1年アンケートで、関西第一営業本部1位を達成した。これは、一邸一邸の「家づくりのストーリー」を大切に考えてきた結果でもある。「お客様の思いに耳を傾け、敷地の条件をしっかり読み取ることが設計の仕事。家づくりはお客様とスタッフが一緒に協力し合ってつくり上げていくもの。ストーリーが大切なんです」
久永は、いつもお客様にこう伝えている。
「家づくりは、プロセスまるごと楽しんでください」

Hisanaga tile

久永茂生/1978年神戸市生まれ。東北大学工学部建築学科在学中に、課題で設計した「祈りの空間」がJIA東北建築学生賞奨励賞を受賞。その後、東北大学大学院工学研究科に進み都市・建築学を専攻。在学中の1年間、阿部仁史アトリエにて建築の基礎を学ぶ。2004年に株式会社長谷工コーポレーションに入社し、分譲マンションの設計を手がける。その後、お客様と共に家づくりをしたいという思いを実現するため、2006年に積水ハウスに転職。以来150棟余りの住宅の設計を手がけ、2013年には「63上期設計部門お客様入居後1年アンケート」で関西第一営業本部1位を獲得している。