大きな”家族”のための
和の邸宅
会社の経営に携わるオーナーの思いは、家族はもちろん、社員も家族のように集ってともに解放され、癒やされるようなもてなしの空間をつくりたい、ということ。
それに応えるため、外とのつながりのある和の空間と広大な庭、さらに周囲の森や山の風景も取り込んで、家の中と自然を一体化する開放感を目指しました。
どこにいても落ち着ける。
どこにいても自然を感じられる空間を創出しています。
デッキに沿って、リビング、通り土間を設け、人が気軽に集いやすい空間に。
回遊しながらも自然に、プライベートな空間とパブリックな空間が分かれるように配置しています。
通り土間突き当たり右手奥の大壁和室は床座で、中庭や西の庭、遠景に山並みも望めるようにプラン。
黒竹天井、目積畳、アートな印象のタイルの張られた床の間を配し、和の趣ながらもモダンな印象に。
もてなしの空間としても上質な佇まいをかたちにしました。
渡り廊下は、右手に中庭、左手に外庭、さらに前には格子戸越しに趣のある和室の様子がうかがえる、自然を暮らしに取り入れる、和の心を感じられる場所としました。
より開放的な印象を高めるため、随所に視線の”抜け”をつくりました。
たとえば玄関に立った瞬間、中庭と、さらにその先の風景までも見通せるようにしています。
ウッドデッキを中庭から外庭へ連続させることで、遠景の山々にもつながるような、豊かな広がりと開放感を生み出しました。
また中庭と母屋の間の土間空間からも、西への遠景と視線が抜けます。
西側には主庭とウッドデッキを設け、こだわりの庭の近景と、さらにその先にある美しい山並みの遠景との一体感を感じられる場としています。
主庭には築山を造り、その一角にオーナーが望んでいた小さな滝を実現しました。
檜造りの数奇屋門をくぐると建物へといざなう長いアプローチを設定。
白い砕石を一面に敷き詰め、大きな天然石や蹲(つくばい)、植栽を大胆に配しています。
また、動線は直進させつつも、東の庭の手前に大きな自然石を配置。
その面で一度視線を受け止め、その先をあえて隠すことで、奥行きと奥ゆかしさを演出。
また室内に向かうまでに、期待感を高めていくようなストーリーを考えました。
夜、庭に照明を入れ、また室内からも灯りが漏れると、日の落ちた自然の中に、美しい佇まいが浮かび上がるように。また西の主庭には月見デッキを設け、夜も自然の気配を楽しみ、温かく人を迎える佇まいを演出しました。
西側の主庭に実現したオーナーこだわりの「滝」。
そこから流れ出す水は中庭に引き込み、そのせせらぎで訪れる人の目と耳を楽しませるようにしました。
庭には大小多数の自然石と60本に及ぶ樹木を配し、大自然の風景を演出しています。
建築のスケールに負けないよう、自然石は最大2〜3トンクラスのものも採用。
建物と対峙できる存在感を持たせ、力強さと風格のある出来映えとなったと思います。
母屋と南側の中庭とはさんで離れをプラン。オーナーが経営する会社の保養施設として利用しています。露天風呂、内湯、サウナを備え、秘湯に向かうようにアプローチは山道にはいるような雰囲気を創出しています。
お客様の言葉に出来ていない思いやニュアンスを汲み取り、暮らしやすく、居心地の良さを求めた住まい手にやさしい設計をしたいと考えてます。
家族構成/夫婦+子ども1人
所在地/福岡県
敷地面積/1214.76㎡
延床面積/457.00㎡
取材年月/2010年11月