重厚感とモダンさが
もてなす大人の空間
代々住み続けてきた土地で、
地域に根ざした高齢者福祉施設を経営されているオーナー。
隣接する新居は打ち合わせや集まりの場とするとともに、
新たな街並のシンボルにとも考えられました。
そこでパブリックなスペースは生活感をなくし重厚で洗練されたインテリアに。
外観フォルムは、高級感の中にもモダンでシャープな印象を施すことで、
街に新たな風景と、活気をもたらす存在感を生み出しています。
吹き抜けを介し、2階のセミパブリックスペースである子世帯リビングとの程よい距離感で繋げました。窓の位置や照明の計画を綿密に行い、上下階で朝・昼・夜と光を分け合う工夫をしています。
南側にオーナーが経営する高齢者福祉施設があることから、メインの窓は西側に。
大きな吹き抜けを設けて上下階を繋ぎ、
朝から夕方まで、時間ごとに移り変わる自然光を空間ごとに分け合うようにしています。
例えば朝は、ダイニングの東側の大きな窓からは朝日が白い床に反射しながら、
リビングにまでも明るい光をもたらします。
また午後は、外光が吹き抜けの白い壁に反射し、上下階を照らします。
風も爽やかに、ダイニング、リビング、そしてテラスにまで通り抜ける、
開放感に満ちた大空間を提案しました。
1階リビングは、午後の光をダイナミックに取り込む吹き抜けのピットリビングとし、訪れた人に驚きと安らぎを与える心地よい空間としています。
ダイニング東側の開口からは輝く陽光が差し込み、白いタイルの床を介し、空間全体に柔らかな光を届けます。
2階のセミパブリックスペースである子世帯のリビングダイニング。午前は東側の窓から朝日が、午後は吹き抜けの白い壁と床に反射した優しい光が差し込みます。
リビングダイニングはビジネスシーンにも使われるとのことから、
インテリアはシンプルでありながら、“大人の空間”としてふさわしい、
ラグジュアリーな要素を上品にまとめました。
ダイニングの大きな床面には白いタイルを採用し、高級感を創出するとともに
東側の大きな窓から差し込む光が反射して、リビングにも行き渡るようにしています。
また明るさを考えた白い壁や床の中で、“黒”を効果的に使用しました。
その“黒”もタイルであったり、テクスチャーの異なる塗りの壁であったりと、変化のある質感で空間を重厚かつ上質に引き締めています。
白い壁と白い床の中に黒いタイルの壁を設けて、明るさと重厚感を両立しました。タイルの壁の上部は木製のルーバーとし、重い印象にならないよう、また、内部のキッチンが閉鎖された空間と感じられないようにしています。
玄関ホールの壁は一見、黒に見えますが、よく見るとマーブル柄のテクスチャーのある塗り壁となっています。夜は間接照明でそのテクスチャーが浮かび上がり、昼夜ともに上質な質感を空間にもたらします。
梨農家が点在する郊外の立地にあって、経営者として活躍するオーナーは、
地域を若い世代にも魅力ある街にしたいとお考えでした。
まず新築する住まいを、
街の雰囲気を変える、新たなシンボルとなるものにしたいというご希望に応え、
モダンで洗練された外観フォルムをデザインしました。
フラット屋根でエッジを効かせ、ホワイトを基調にシルバーの丸柱や
2階バルコニーのブラックの手摺りでシャープな印象に。
石張りの壁をアクセントに加えて経年美化を図るとともに、
経営者の住まいとしてふさわしい重厚感をもたらしています。
フラット屋根と軒の水平ラインがシャープな印象の外観。玄関横と、西側奥の1・2階を縦に貫く石張りの壁が、モダンさの中にも贅沢な質感をもたらしています。
石張りの壁に挟まれ、外からの視線を気にせずにくつろげるテラスは、室内のリビングとも繋がった贅沢なもうひとつのリビングに。ベンチも設置して気軽に自然と触れ合えるスペースとなっています。壁は完全に閉じるのではなく、スリット部分を設けることで“抜け”を創出し、外の気配を感じられるよう配慮しています。
自然光だけでなく照明計画でも、光を空間で分け合う工夫をしています。
ひとつには外構の灯りを上手に利用すること。
テラスやバルコニーなどに、植栽を照らす温かい光の照明を設置し、
戸外の光を室内に取り込むことで、
間接光による落ち着いた、そして特別な時間の流れを空間にもたらしています。
また1・2階を繋ぐ役割としての照明も計画。
吹き抜けの天井に配した照明は、1階リビングに光と陰影をもたらすとともに、
同じ光で2階リビングもほのかに照らします。
光を共有することで、繋がりを感じさせる空間としました。
1階リビングは室内の照明を落としても、白い壁や床に反射した戸外からの間接光が優しく照らします。ほの明るい空間が、贅沢なひと時をもたらします。
吹き抜けの天井に配した照明は、大きな空間に陰影をつけることで、豊かな表情を創り出します。天井の光源が直接2階から見えて眩しくならないよう、スリットを深くし、奥に配置しています。
プランニングに際しては、まず敷地の環境と、オーナー様のご要望を伺い、そこからプランを導き出しています。デザインに際しては、必要な要素となるものだけを残して余計なものを削ぎ落とし、“2あるものを1に見せる”工夫をしています。常にお客様のご期待以上の提案を心がけおり、たとえば扉を開けた先には何があるのかを意識し、意外性と感動を与えられるような空間提案を目指しています。
家族構成/夫婦+子ども1人+両親
所在地/千葉県
敷地面積/496.20㎡
延床面積/381.97㎡
取材年月/2019年4月