“雑木林”とともに暮らす
心地よい住まい
日本にはかつて里山が見られ、そこには雑木林があり四季折々の緑の表情や鳥や蝶が集まる豊かな生態系が見られました。
今回、オーナーの願いは、庭に好きな木々を植えて雑木林を作り、それを室内にいるときも存分に楽しみたい、というもの。
そんなオーナーの想いに応えるため広々としたリビングダイニングの空間にコーナーと連続し、L字型に大きく開いた窓をプラン。
庭の木々が織りなす自然の息吹を、室内全面に取り込みました。
深い軒をぐるりとまわし内と外の中間領域を創出。
さらにフラットなデッキを介して、庭とはスムーズに行き来が可能。
新緑の季節には、ご親戚を招いてのガーデンパーティーも開かれているとのこと。
庭までが寛ぎの空間となる戸外と室内が一体となった住まいを創り上げることができました。
北西側道路に面したファサードは、下屋を大きく、ぐるりとかけて、水平ラインを強調。
吹き付けと、陶版外壁のベルバーンで上質な味わいを加えています。
道路からは後退させて、街並みへの圧迫感を軽減。
さらに道路側は閉鎖的な空間とし庭への視線を遮断しました。
ファサードの向こう側にはあふれる開放感を内包しつつも、プライバシーを確保しています。
大きくセットバックしたスペースに、オーナーがこだわった木々と、60トンもの自然石を配して、林の中の小径のようなアプローチをプラン。街の一画に潤いある風景を新たに創出しました。
外壁の一部に木製の縦格子が。外壁の質感と調和して重厚感を演出。内側は玄関脇の坪庭になっています。
コーナーサッシを存分に活かして、庭の景観を楽しむために、キッチンの位置を北東側に後退させ、南東側への視線の抜けを実現。
キッチンはそれにより、家事スペースや水回りと一体化させることができ。
家事動線もスムーズに。
コーナーに大開口を取るために構造も工夫して、可能な限り視線を遮ることのない、大きな開放感を実現しました。
また2階のボリュームを抑えて、伸びやかな勾配天井による頭上の気持ち良さも創造しました。
さらにウォルナットの床、あらわしの梁やアクセント柱の木質感、そして石貼りの壁で、室内にも自然の温かさをもたらしています。
リビングダイニングに繋がる北側の和室にはへりのない琉球畳を採用し、上質な“和”の空間を実現しました。
その先の庭にはつくばいを配しまわりの雑木林とは異なる和の空間を実現し、建物のまわりで様々な庭を楽しんでいただけるような工夫をしています。
和室から見たメインの庭の風景。室内に配された床、あらわしの梁や柱の木の風合いも調和して、戸外と室内が一体となったような光景が広がります。
オーナーがこだわったのは、西洋の庭園のように作り込まれたものではなく、日本の雑木林のように、四季折々に姿を変える、ありのままの自然の姿を見せる庭。
一本一本選び抜かれた樹木が植えられています。
木々は室内に圧迫感を与えないようにほどよい距離を取って植樹。
庭の外周にはやがては高木となり目隠しとなるシラカシを、手前にはシンボルツリーとなるクスノキを植え、その遠近感で奥行きを演出しています。
その他、イロハモミジやヤマボウシ、アラカシ、サルスベリ、ツツジ等の多彩な樹種が。
さらにケヤキが夏の庭に木陰を作ることを期待して庭の南側に植えられています。
庭の建物に近い部分には芝を敷き、外周部に多種多様な木々を植樹。季節により、また時間により影が移ろい、自然を身近に感じさせます。新緑の季節には、約30人のご親戚が集まって、バーベキューを楽しまれたそう。木立の中の別荘のように、ゆったりとした時間が流れる家としています。
まず、住まいとしての機能をしっかりと踏まえ、暮らしやすい家づくりを目指しています。また大きな家は、ともすれば廊下が長くなり、暗がりが出来やすいのですが、窓や坪庭を上手に配して、息が詰まらない住空間を心掛けています。
家族構成/夫婦+子+孫
所在地/茨城県
敷地面積/997.69㎡
延床面積/276.18㎡
取材年月/2016年10月