写真左から、網目コップ(大・中・小)、網目丸壺(中・小)

身近な日用品の中に美を見出す“民藝”。職人たちの丁寧な手仕事によって生み出される民藝品には、大量生産の工業製品にはない独特な味わい深さがあり、日々の暮らしをより楽しくしてくれます。
今回お話をうかがったのは、民藝にゆかりの深い倉敷で日常使いのガラス器をつくり続けている石川昌浩さんです。素朴さと繊細さが共存する、どこかノスタルジックなコップはたいへん人気が高く、全国各地のお店から常にたくさんの注文が。それに応えるべく、石川さんは毎日休むことなくガラスを吹いています。

“現代の民藝”を追求し自慢の仲間たちと展示会を開催。

安心して扱える程よい厚み、手にしっくりとなじむ重さと重心、手吹きならではの小さな気泡や表面のゆらぎ、はちみつ色と形容される黄味がかった色合い。透明な飲み物を注ぐと、テーブルの上に揺らめく影ができ、“いつものコップ”なのに、ちょっぴり胸がときめく……。そんな素敵なコップをつくっている石川さんにお会いするため、展示会が行われている岡山市北区問屋町の「くらしのギャラリー本店」へ向かいました。

たくさんのコップに加え、コルクつきのボトル、水差し、鉢物など、さまざまなアイテムが一堂に会するのは大がかりな展示会ならでは。

10年以上続くこの展示会、これまでは石川さん+1の二人展として開催されていましたが、今年は石川さんを含めて13名の作者が手がけた焼き物、カトラリー、布製品、靴などなど、多彩な作品が大集合。皮の財布や電球など、なかには民藝のカテゴリーには当てはまりそうにないアイテムも……。
「従来の考え方では、そうですね。でも、そもそも民藝って、伝統や権威に対する鮮烈なカウンターカルチャーとして生まれたもの。美術品や鑑賞のための伝統工芸こそが美しいとされていた時代に、名もなき職人たちがつくった庶民のための生活用品のなかに“美”を発見するなんて、当時の価値観からしたら画期的なことですからね。そこで今回は、僕の自慢の仲間たちと、彼らがつくっている“毎日の生活をワクワクさせる生活用品”を集め、“今の民藝”として紹介することにしました。」

たくさんのコップに加え、コルクつきのボトル、水差し、鉢物など、さまざまなアイテムが一堂に会するのは大がかりな展示会ならでは。

くらしのギャラリーでは、岡山をはじめ各地から目利きした“暮らしに根づいた手仕事品”を展示・販売。今回の展示会名の「岡山県民藝振興株式会社」は、くらしのギャラリーを運営する企業の名前です。

展示会のビジュアルは、くらしのギャラリー店主の仁科聡さん(12人!)が、中央の石川さんを取り囲むユニークなデザイン。「2020年は誰にとっても我慢の1年でしたよね。あの経験を経て展示会をやるからには、とびきりワクワクしたものにしたくて、ビジュアルも遊んでみました。」

六角コップ(小)。一見、すべて同じに見えますが、手づくりなので大きさも形も、ひとつとして同じものはありません。

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