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90年代のビストロブームやフレンチカフェブームを牽引し、カラフルな鋳物ホーロー鍋“ル・クルーゼ”を日本にいち早く紹介するなど、フランスの暮らしの魅力を発信。日本で「スローライフ」という言葉が広まるずっと前から、“毎日の生活を慈しみ、手をかけ、楽しむことの素晴らしさ”を伝えてきたパトリス・ジュリアンさん。そんなパトリスさんの達人たる暮らしぶりを、インタビューを交えてお届けします。

自身のレストランから
食の新しい楽しみ方を発信。

築25年の日本家屋を大胆に改造した開放的な空間に、ガラス越しに見えるのは、パトリスさんたちが楽しげに料理するオープンキッチンの様子や、棚に並ぶ色とりどりのル・クルーゼ。従来の高級フランス料理店とはまったく違う明るく軽やかな雰囲気のなか、お客さんたちはみな、まるでお宅に招かれているような、幸せな時間を楽しんだのです。
ここは、レストラン「C.F.A.(サントル・フランセ・デ・ザール)」。料理やファッションの本、フランスの雑誌や写真集が並ぶ図書室を備え、その日のインスピレーションで決まるメニューに合わせて、ワインやチーズ、器、クロスや照明、音楽までトータルコーディネートされたパトリスさんのこのレストランは評判となり、連日、アーティストやデザイナーをはじめ、流行に敏感な人たちで賑わいました。

外交官として1988年に来日したパトリス・ジュリアンさんは、フランス大使館に2年間勤務した後、東京日仏学院の副院長を約4年間在任。当時ご自宅でお客様にふるまっていた料理が評判を呼び、’92年に料理本「フランス料理ABC」を出版し、’94年に東京・港区白金台の閑静な住宅街に、このレストラン「C.F.A.」を開きました。以来、2017年にフランス、ベジエに拠点を移すまで、中断をはさみながらも日本で暮らし、スローで美しいライフスタイルを発信し続けてこられました。

毎日繰り返される日常生活を
アートのように創り、楽しむ。

2003年に、ライフスタイルの提案やコンサルティングを手がける「ライフスタイルデザイナー」へと転身。翌年には「C.F.A.」と住居・オフィスを兼ねていた一軒家から、桜の名所としても知られる洗足池公園に面した築45年の日本家屋へと移り住んだパトリスさん。
数ある著作の中で、20年以上人気のある「生活はアート」の中に、古い家屋を素敵に住みこなすパトリスさんの価値観が綴られています。
「日常生活をアートとしてとらえ、衣食住のすべてを意識を持って選んでいくこと。自分の人生を、作品を作るように整え、いちばん楽しい感じに表現すること。繰り返される日常をただ生きるのではなく、細部にこだわって楽しむことで、毎日の暮らしが喜びに満ちたものになります。」(パトリスさん/以下同)
たとえば、疲れて帰ってきた夜の食事について書かれた「面倒なことを楽しむ」という章には、こんな文章があります。『食卓をアレンジすることを面倒なことと思うか、自分はテーブルを彩るフードコーディネーターだとプラス思考で考えるのかはその人次第です。大人なら忙しくない人はめったいにいない。仕事をしていたり、家をマネージしていたり、そのどちらであっても、一生懸命生きていれば夜には誰だって疲れちゃっているはず。そんな時こそ、面倒なことやささいなことに心を費やせば、人生が何倍も楽しくなるのを知っている人は少ないように思えます。てっとり早く何を食べるかよりも、どんなふうに食べるのかを考える人。また、何を着るかよりも、どんなふうに着こなすかを工夫できる人。ささいな日常に意味をもたせることができたら、その人は素敵な生活の達人といえるでしょう。』
常に人生を楽しもうという気持ちを持ち続け、ちょっとした手間を惜しまず工夫を凝らせば、毎日の生活はもっともっとクリエイティブなものになると、パトリスさんは教えてくれます。

自分自身のために
住空間を美しく整えたい。

誰かに見せるためではなく、自分自身が最高に心地よく過ごせるよう、住空間をとことん美しく整えるのもパトリス流の暮らし方。家具も雑貨も一つひとつ厳選し、お皿1枚でも、気に入らないものは身のまわりに置きません。
たとえば洗足池のお住まいの場合、リビングの合板の壁は特注の本棚で埋め尽くし、ダイニングの壁にあるプラスチック製のインターホンは、木製のタオルハンガーとお気に入りの布で目隠しを。借家であっても、工夫次第で心地よい空間はつくれるといいます。

「素材の味や風合い、そして住空間とインテリアのバランスです。その場所に似合う家具や装飾品など、すべての調和を考えながら選びます。古い日本家屋に住んでいたとき、素敵だと思った東南アジアのアイテムを配置してみたら、どうしても違和感があり、飾るのをやめたこともありました。」
お子さんの頃の家は、どんな環境でしたか?
「母親が画家で、家の中にはいつも花や植物が飾られていました。家具などのインテリアもアートな感じに整えられていたので、自然と影響を受けたのだと思います。」

小窓に障子を入れ、温かみのある雰囲気に仕上げた玄関、フランスの片田舎をイメージしたキッチン、イングリッシュガーデン風の庭に面した手づくりのウッドデッキ……。こんな素敵な空間を生み出すセンスは、そこから培われていたのかもしれませんね。

C.F.A.(店舗と料理)/撮影:半田広徳
(主婦の友社 パトリス・ジュリアン著「パトリスジュリアンの幸福レシピ」)
ご自宅/撮影:飯貝拓司
(扶桑社「住まいの設計」2009年6月号)

パトリス・ジュリアン

1952年生まれ(モロッコ生まれのフランス人)。
1988年、フランス大使館文化担当官として来日。東京日仏学院副院長を経て、複数のレストランのオーナーシェフを努めたのち、2003年に「パトリス・ジュリアン ライフスタイルデザインオフィス」を設立。ビストロやカフェブームのパイオニアとして知られているだけでなく、商品開発、プロデュース、講演、執筆、ワークショップなど、多岐にわたる活動をしている。
著書は50冊を超え、代表作には「生活はアート」(幻冬舎文庫)がある。近著は「ライフレシピ フランス流『シンプルで豊かな暮らし』を手に入れる30のレッスン」(講談社)。

後篇では、昨年夏に東京から移り住んだ、南フランスの古都ベジエのアパルトマンをご紹介いただきます。どうぞお楽しみに!

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