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小舟に乗って川をさかのぼり宿へと向かう「星のや京都」に代表される、独特な世界観と温かなホスピタリティーで、唯一無二の存在感を放っているホテル「星のや」。そこには、地域の自然や文化を生かし、滞在期間を感動やときめきに満ちたものにするためのアイデアがいっぱいです。そんな「星のや」でしか味わえない魅力を、どのようにつくり出していったのか、星野佳路さんのルーツである軽井沢の「星のや軽井沢」を訪れ、お話を伺いました。

水辺を中心にした優雅で心地よい異空間。

私たちがまず向かったのは、「星のや軽井沢」の滞在エリアから少し離れた場所にあるレセプション(受付)。宿泊客はここで、アジアの民族楽器を思わせる心地よい演奏とウェルカムドリンクに迎えられ、チェックインの手続きをします。そして星のや専用車に乗って滞在エリアへ。
そこに広がっていたのは、水辺を囲むように離れの客室が立ち並ぶ、美しくも、どこか懐かしさを感じさせる風景。フロントやレストランが入った“集いの館”の横にはダイナミックな棚田が広がり、涼やかな水音が響いています。点在する離れ家は細い散策路でつながっていて、そこをのんびり進んでいくと、建物と建物の間からふいに水辺が見えたり、路地に迷い込んだような気分になったり……。すっかり非日常の世界に入り込んでいることに気づきます。

星野さんへのインタビューを行ったのは、「水波の部屋」と名付けられた水辺のお部屋。窓の外から心地よい水音が聞こえてきます。
「星のや軽井沢は敷地内のどこにいても“水辺”を感じていただけるよう、池のあちこちに小さな滝のような段差をつけて水音を作っています。私は今、窓を背にして話していますが、ちゃんと“水”を感じていますよ。」と星野さん。
星のや軽井沢の客室は「水波の部屋」、木々に囲まれた「山路地の部屋」、戸建ての「庭路地の部屋」の計3タイプ。どの部屋も、ゆったりくつろぎながら四季折々の自然を満喫できる“滞在を楽しむための空間”です。

日本家屋の伝統にモダンなテイストをプラスした建築も、水辺や棚田、さらには丘や林道まであるドラマチックな景観も、単に美しいだけではなく、とびきりの気持ちよさを与えてくれます。この心地よい非日常空間をつくったのは、建築家の東利恵さんと、ランドスケープデザイナーの長谷川浩己さん。お二人は「星のや軽井沢」以降、星野リゾートのホテルをいくつも手がけています。
「私たちはみな年齢が近く、言いたいことを何でも言い合える関係で、ケンカもしょっちゅうです(笑)。三人でイメージを共有するため、これまで何度も一緒に世界を旅して、さまざまな場所を見てきました。この“星のや軽井沢”とその周辺をデザインする際には、長谷川さんが“あれが自分のイメージだ”というスウェーデンの森の墓地(スコーグスシュルコゴーデン)へ。自然と近代建築が融合した、世界遺産にもなっているお墓です。そこでも三人でたくさん議論しましたよ。そんなコミュニケーションが、私たちのリゾートづくりにはとても大切なのです。」。

ここでしか味わえない、かけがえのない時間。

星のや軽井沢には、もうひとつ大きな特徴があります。それは「星のや軽井沢」の前身で、星野佳路さんの曽祖父・星野嘉助さんが大正3年(1914年)に創業した「星野温泉旅館」の時代から続く環境に対する取り組みです。
「野鳥と山が大好きだった祖父が打ち出した“森を森のままにして、価値を生み出せ”という方向性に共感しているので、私もそれを継承しています。美しい森は、この地域の最大の魅力です」
星野さんの祖父・2代目星野嘉助さんの尽力もあり、星野温泉に隣接する森が昭和49年に「国設野鳥の森」に指定され、平成4年には星野リゾートに「野鳥研究室」が誕生。研究所は後に「ピッキオ」という名称に変わり、現在はバードウォッチング、ムササビウォッチングといったエコツーリングや、ツキニワグマの保護管理などを行っています。

環境に対するもうひとつの取り組みは、エネルギーの自給自足。星野さんは、昭和4年に2代目星野嘉助さんが敷地内に建設した水力発電所を今も維持しながら、それに加えて地中熱を利用するヒートポンプシステムも開発。現在、星のや軽井沢で使うエネルギーの74%を自給しています。
さらに驚きなのが、星のや軽井沢の象徴ともいえる水辺が、実はすぐ近くを流れる湯川の水を引き込んでつくった、水力発電用の池だということ。あの美しい水景は宿泊客の目や耳を楽しませ、心を癒やすと同時に、自然エネルギーもつくりだしているのです。

留学先のアメリカで
目指すべき道が明確に。

さて、ここで「星のや」誕生の歴史を少し振り返っておきましょう。
「星のや軽井沢」の前身「星野温泉旅館」は、神社風の優雅な浴場を持つ温泉宿。内村鑑三、北原白秋、島崎藤村、与謝野晶子といった文人が集い、軽井沢文化を牽引する場となっていたそうです。この美しい自然に囲まれた古風な宿泊施設を「自分が継いだら、欧米のリゾートホテルのようにお洒落に変えようと思っていた」という星野さんですが、ホテル経営を学ぶために2年間留学したアメリカの大学院での出来事で、考えが大きく変わりました。
「ある日、著名人を招いたレセプションがあり、“服装はフォーマル”という指定だったので、迷うことなく大学時代に買ったスーツで出席しました。ところがインドや中東など他国からの留学生はみんな民族衣装風の服を着ていて、私は彼らから“お前はサムライの国から来たのに、どうしてイギリス人の真似をしているんだ?”“日本人は本当は欧米人になりたいのか?”などと、からかわれたのです。あれはショックでした。
でもそのおかげで“日本人の私がやるべき仕事は、格好いい日本旅館をつくることなんだ”とはっきり気づくことができました。今でもホテルや旅館をプランニングする際には“あのクラスメートたちがここに来たとき、どんな風に感じるだろう?”と必ず考えます。」

「星のや」成功のカギとなったアメリカでの体験は、今も星野さんの創造力を刺激し続けているようです。

星野 佳路(ほしの よしはる)

星野リゾート代表。1960年、長野県軽井沢町生まれ。
1987年、慶應義塾大学経済学部卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院にて経営学修士号を取得。1991年、株式会社星野温泉(現・星野リゾート)代表取締役社長に就任。“リゾート運営の達人になる”という経営ビジョンのもと、非日常を演出する滞在型リゾート「星のや」、地域の魅力にこだわった温泉旅館「界」、大人のためのファミリーリゾート「リゾナーレ」、都市観光ホテル「OMO」などを展開。

星のや
https://hoshinoya.com/

星野リゾート
https://www.hoshinoresorts.com/

星野リゾート 夏の東北旅
https://www.hoshinoresorts.com/sp/sum_tohoku/

星野リゾート 界 夏の涼感あふれる温泉旅
https://kai-ryokan.jp/features/summer2018/20180414213031.html

後篇では、星のやの魅力=“非日常の演出”のルーツや、星野さんご自身にとっての“非日常”についてお話しいただきます。どうぞお楽しみに!

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