私自身、住宅建築を設計する上で、いつも考えていることは、「必要最小限」ということです。これは、夢やご要望を削っていくということではありません。むしろ、逆のことです。
たとえば、「陰陽」という言葉があります。「明るい」と感じるためには、「暗い」を感じて初めて「より明るい」と感じます。「広い」と感じるためには、「狭い」を感じて初めて「より広い」を感じることができます。人の感情は、得てして、「絶対的」ではなく「相対的」な要因に左右されるものです。
このことは住宅設計においても同様で、その空間で本当に望むことを整理・吟味していき、優先順位をつけ、時には、“省く”ことによって、より本当に望むことが明確に実現できると思います。また、この作業によって、望み以上の効果が得られることもあります。
設計士は、施主様のご要望を叶えて形にするのが仕事ですが、施主様のご要望以上の、空間や利便性を提供することこそ、本当の仕事だと思っています。「必要最小限」から生まれる、「無限大」の可能性を見つけていきたいと思っています。 |
住宅は、個人の持ち物であるとともに、その地域の一部でもあります。大きく捉えれば、地球の上の一部、ともいえます。法律を守って、個人の住宅を建築することは当然ですが、その地域の環境、景観を守ることも大事だと思います。当社の推奨する「サステナブルな住宅」「5本の木計画」などはまさにその思想からですが、逆に考えて、その地域の環境・景観を個人の住宅に活かす・取り込むことも重要だと思います。
地域環境をうまく個人住宅に取り込めれば、限られた敷地・限られた建物に、何倍もの広がりや、快適性を生んでくれます。“空”は無限大で、“海”は雄大で“川”はすがすがしく、“緑”は心地よく…。プライバシーを確保しながら、できるだけ素直に取り込めれたら、より豊かな生活が送れると思います。都心で、環境に恵まれないなら、少しでも敷地内・建物内に造っていけたらとも思っています。
“その地の環境に対して素直に建築すること”が、人にも、環境にもやさしい建築だと思います。 |
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先日、たまたま乗った横浜市の地下鉄は、「全車両全席優先席」でした。この文字を見たときは、「えっ?」と思ってしまいましたが、ふと考えてみれば、人として、シルバーシートでなくても“お年寄りや体の不自由な人に席を譲る”ことは、ごく当たり前のことですよね。一般的な“一部シルバーシート”という概念は、そもそも違うと思います(私個人の意見ですが…)。
更に、この「全車両全席優先席」と書いてあること自体、悲しいことに思えてきます。「シルバーシート」と書いてあること、書かなくてはならないのが、現実の社会です。
このことで、私自身を振り返った時、設計士としてというよりも前に、“人”として、施主様と接し、提案していかなくてはならないと改めて感じました。
私は現在、自分自身が設計した住宅に、両親を含め家族5人で暮らしています。私自身では、考えぬいて、より快適な暮らしを目指し、設計しましたが、実現できたこともあれば、「ここは、こうしておけば良かった」という所も、家族の意見としてあるのも事実です。建築は「経験工学」ともいいますが、住宅はさらに、「人間・経験工学」とでも言えるのではないでしょうか。この仕事をして、現在450邸近くの設計をさせていただいていますが、過去の施主様のご意見を十分に反映して、これからの施主様への提案に活かしていきたいと思っています。 |
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