私の設計の基本は
「つくりすぎない」こと。
―共同住宅の設計について、どのようなこだわりを持っていますか?
共同住宅は、多様な形態で住むことが予想されますから、逆につくり込まない方がいいというのが私の考えです。大きな窓は室内が明るくなるけど、窓が大きいばっかりに家具が置けなくなるという可能性も出てきてしまいますので。
それに、入居者様それぞれにインテリアの好みがありますよね。それが間取りで制約されては、いけないと思うんです。入居者様自身が自由にレイアウトできるような間取りを決める。住むための空間をつくる者として、とても大切にしていることです。
使いやすい間取りと
階ごとに異なるインテリアデザイン。
―実際に携わった物件について聞かせてください。
以前、緑をテーマにファミリー層をターゲットにした賃貸住宅を担当しました。斬新さよりも使いやすさを重視した間取りの、ゆったりとした2LDKタイプです。家事を助けるカウンターキッチンや大きめの洗面所、独立したトイレ、乾燥暖房機付の浴室、広めの収納など、入居者様が快適に暮らしていただける工夫を随所に施しました。
それに、階ごとにインテリアのデザインや色調を変えているんですよ。
―そこには、どのような意図があるのでしょうか?
窓の高さが変わると、室内に入る日光の量も変わります。ですから、そこを考慮して1階の建具や床は明るい色に、2階は中間色、3階は建具を濃い色にして床を白にした、メリハリのあるインテリアにしました。
―見た目のイメージというのは大切ですね。
はい。ですから、外観を設計する上でも「道路側からの見え方」に気を付けました。周囲の豊かな緑に建物が埋もれてしまわないよう、建物を斜めに並んでいるようなデザインにすることで陰影を与えています。さらに、アクセントとして淡い色の外壁を使用することで、重厚感を持たせました。
外観や間取りばかりではなく
共用部も重要。
―とくに力を入れたのはどのようなところでしょうか?
共用部ですね。共同住宅にとって、その価値を決めるのは、外観の見え方や室内の間取りだけではありません。外部と各戸を結ぶ空間である共用部のしつらえも大きなポイントと考えています。ですから、ここではエントランスの壁に天然石を使用し、それをダウンライトでやさしく照らし出すことで高級感を出しています。
また、自動ドアの先の階段や廊下は、白いタイルと白い壁にしました。階段をガラスとスチール、さらに窓を大きくしたので、スタイリッシュで軽快な空間に仕上がったと思います。
建物に限った話ではありませんが、外を見て感動していただいても、中を見てがっかりされるのではいけませんからね。一層力が入ります。

斜めに並んでいるように建てることで、陰影が生まれる

階ごとの日光量に応じて床などの色を変えている(写真は2階)

おさえた色調で落ち着きのあるインテリアに

窓から差し込む光により明るさが増す共用部





